【最新!】令和6年7月期一陸技試験『無線工学の基礎』A-6 解説⑥🍌

無線工学の基礎

図に示す、交流電圧$\dot{V}=100[V]$に誘導性負荷$\dot{Z_1}[Ω]$および容量性負荷$\dot{Z_2}[Ω]$を接続したとき、回路全体の皮相電力及び力率の値の組み合わせとして、正しいものを選べ。
ただし、$\dot{Z_1}$および$\dot{Z_2}$の有効電力および力率は表の値とする。

1. 皮相電力:$500\sqrt{3}$[VA] 力率:$\Large\frac{1}{\sqrt{2}}$
2. 皮相電力:$500\sqrt{5}$[VA] 力率:$\Large\frac{2}{\sqrt{5}}$
3. 皮相電力:$1000\sqrt{3}$[VA] 力率:$\Large\frac{1}{\sqrt{2}}$
4. 皮相電力:$1000\sqrt{3}$[VA] 力率:$\Large\frac{2}{\sqrt{5}}$
5. 皮相電力:$1000\sqrt{5}$[VA] 力率:$\Large\frac{1}{\sqrt{2}}$

おさる君
おさる君

VとZのうえにホクロがついてるッキ

ざるい先生
ざるい先生

$\dot{V},\dot{Z}$

ホクロじゃなくてフェーザ表示だよ

フェーザ表示とは?

フェーザとは、「大きさ」と「位相」を複素数で表したものです。

時間とともに変化する波(電圧や電流など)を簡単に扱うために使われます。

例えば、同じ周波数の2つの交流電圧v1v2があり、二つの波の位相差がθのとき、正弦波で示すと以下のようになります。

これをフェーザ表示すると以下になります。

$\dot{V_1}=V_{m1}$
$\dot{V_2}=V_{m2}e^{jθ}$
$\dot{V}=V_{m1}+V_{m2}e^{jθ}$

このように示すことで、三角関数の計算が不要となり、より簡単に計算できるようなるのです。

皮相電力とは?

おさる君
おさる君

皮相って何だッキ?

ざるい先生
ざるい先生

うわべ、上っ面って意味だよ

見かけ上の電力ってことだね

直流電源とは異なり、交流電源では負荷によって消費される電力と、負荷で消費されず電源に戻ってくる電力があります。

このとき、負荷で消費される電力有効電力(実際に使える電力)、行ったり来たりするだけの使えない電力(無駄な電力)を無効電力といいます。

この二つの電力を足し合わせた電力を皮相電力(回路全体に流れる電力)というのです。

皮相電力は以下の式で求められます。

皮相電力:$P_s=V×I$ (V:電圧, I:電流)

力率とは?

力率とは、皮相電力に対する有効電力の割合です。
”回路全体に流れる電力”に対して、どのくらいの割合で”実際に使える電力”を取り出せるのかを示しています。

例えば、回路に流れる電力が100Wで、そのうち実際に使える電力が50Wなら、実際に使える割合は$\frac{1}{2}$ですよね。

つまり、力率は以下の式で求められます。

力率:$cosθ=\Large{\frac{P_a}{P_s}}$ (Pa:有効電力, PS:皮相電力)

①電流を求めよう!

まずは、誘導性負荷$\dot{Z_1}$と容量性負荷$\dot{Z_2}$に流れる電流II2を求めます。

とはいえ、どうやって求めればいいのかわかりませんよね。

ここで使うのが有効電力、皮相電力、力率の関係です。

設問の表から、有効電力と力率の値が明らかになっています。

そして、
皮相電力=電圧×電流
力率=有効電力/皮相電力

でした。

二つの式から、以下の関係が成り立ちます。

$皮相電力P_S=\Large\frac{有効電力P_a}{力率cosθ}$

$電流I×電圧V=\Large\frac{有効電力P_a}{力率cosθ}$

$電流I=\Large\frac{有効電力P_a}{力率cosθ×電圧V}$

このことから$\dot{Z_1}$、$\dot{Z_2}$に流れる電流の大きさI1I2は以下のように導けます。

$I_1={\Large\frac{400}{0.8×100}}=5 [A]$

$I_2={\Large\frac{600}{0.6×100}}=10 [A]$

②電流を合成しよう

①で求めた電流I1I2より、回路全体に流れる電流を求めます。

おさる君
おさる君

単純に足せばいいッキよ~♪

ざるい先生
ざるい先生

それは違うよ。
ベクトルで考えないといけないんだ

交流回路の電流は、時間とともに波形が周期的に変化し、各波形の位相角が異なるため、ベクトルで考えないといけません。

$I=\sqrt{5^2+10^2}=5\sqrt{5}$[A]

これが回路全体に流れる電流になります。

③皮相電力を求めよう!

皮相電力PS=電圧V×電流I

$P_S=V×I=100×5\sqrt{5}=500\sqrt{5}$[W]

④力率を求めよう!

力率cosθ=有効電力Pa/皮相電力Ps

$cosθ=\Large\frac{P_a}{P_s}=\Large\frac{400+600}{500\sqrt{5}}$

$cosθ=\Large\frac{2}{\sqrt{5}}$

皮相電力$P_S=500\sqrt{5}$[W], 力率$cosθ=\Large\frac{2}{\sqrt{5}}$より、

選択肢2が答えです

まとめ

皮相電力と力率を求める問題でした。

今回のポイントです。

①交流電源では、有効電力・無効電力・皮相電力がある。
②皮相電力PS=電圧V×電流I
③力率cosθ=有効電力Pa/皮相電力Ps

参考:試験問題と解答 | 公益財団法人 日本無線協会 (nichimu.or.jp)

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